
もうすぐお父さんの2回目誕生日。
どうして2回目かって?
だって、私、彼と再会できたのが2018年秋だったから。
だから、やっと、2回目のお祝い。
でも、彼はもう最初に会ったときみたいに饒舌にしゃべることも、
積極的に私の名前を呼ぶこともできない。
わたしと再会した後、わずか2ヶ月で急激に進んだ認知症。
会って、ニコニコしてくれる。
1回でも私の名を呼んでくれるとハッとして、
まだ覚えてくれていたんだ、と泣きそうになる。
ほんとうは、もちろん、とうぜん。
あのときに、捨てないでほしかった。
「生きていくのに苦しくて、手放してしまった。
でも、わかるだろ?
どうやって、男一人が、小さな子を育てながら生活していけるんだ?」
そう言われたときに、うんうんうなずいたけれども、
心の中では泣き叫んでいた。
それでも、見捨てないでほしかった、と。
あの記憶の中にぼんやりうつる、知らない女の人は誰?と。
彼は、大人になった私から問い詰められたくなかったのかもしれない。
認知症がひどくなる前に再会できたのは奇跡だろう。
でもやっぱり、ちょっとずるいな、お父さん、て思う。
あと何回お祝いできるだろ?
私の人間嫌いは明らかにあの瞬間から始まっているのだけど、
お父さんのことも許して、
そろそろ卒業するタイミング。